
コロナが世界中で猛威を振るっていた頃、毎日のようにテレビで感染者数が報じられ、ワクチン接種が大きく呼びかけられていました。私自身にとっても、職域接種や大規模接種会場など、社会全体がワクチン接種に向かって動いていたことは、まだそれほど昔のことには感じません。
それから約5年。最近では、当時のように社会全体で「コロナワクチンを打ちましょう」という呼びかけを目にすることは、かなり少なくなりました。
もちろん、コロナワクチンそのものがなくなったわけではありません。現在の日本では、65歳以上など重症化リスクの高い人を中心とした定期接種に変わっており、2024年度以降は接種の努力義務や自治体による接種勧奨もなくなっています。厚生労働省
そんな状況を見ていて、ふと疑問に思いました。
あれだけ多くの人が接種したコロナワクチンは、結局のところ本当に必要だったのでしょうか。
ネットやSNSを見れば、「多くの命を救った」という話がある一方で、「副作用で多くの人が亡くなった」「超過死亡が増えた」「製薬会社が莫大な利益を得るためだった」「mRNAワクチンは遺伝子に影響する」といった話も出てきます。
さらに、当時テレビで頻繁に見かけた専門家や政府の説明について、「本当に正しかったのか」「製薬会社との関係はなかったのか」と疑問を持つ人もいるようです。
私は医師でも研究者でもありません。そして、この記事で「ワクチンは正しかった」「いや、間違っていた」と、最初からどちらかの結論を証明したいわけでもありません。
ただ、これだけいろいろな話が出ているのには、何か理由があるはずです。
そこで今回は、厚生労働省やPMDA、WHOなどの公的資料、研究論文、製薬会社の決算資料、国会議事録などをできる限り確認しながら、「実際に確認されたこと」「一部は事実だったこと」「まだ分かっていないこと」「現在の証拠では支持されていないこと」を分けて調べてみました。今回の調査自体も、2020~2022年当時に分かっていたことと、2026年までに後から分かったことを区別して検証しています。
調べる前の私は、最終的には「必要だった」か「必要なかった」か、どちらかの答えにたどり着くのではないかと思っていました。
でも、実際に調べてみると、話はそんなに単純ではありませんでした。
この記事では、あの頃をもう一度振り返りながら、コロナワクチンについて今だから分かることを、一つずつ整理していきたいと思います。
※この記事は2026年9月時点で確認できる公的資料・研究をもとにまとめています。制度や医学的知見は今後更新される可能性があります。
先に結論。「必要だった/必要なかった」では割り切れなかった
かなりの資料を読んでみて、最初に感じたのは、「コロナワクチンは必要だったのか?」という問い自体が、思っていた以上に答えるのが難しいということでした。
というのも、「誰にとって必要だったのか」「いつの時点の話なのか」で、答えがかなり変わるからです。
2020年末から2021年にかけては、まだ新型コロナに対する免疫を持っていない人が多く、特に高齢者や基礎疾患のある人では、感染した場合の重症化や死亡のリスクが高い状況でした。当時の臨床試験や、その後の実社会のデータを見る限り、こうした人たちへの初回接種には、かなり強い根拠があったと考えられます。
一方で、20代の健康な人や子どもまで同じように考えていいのかというと、そう単純ではありません。
もともとの重症化リスクが低ければ、ワクチンによって得られる絶対的な利益も小さくなります。さらに2021年には、特に若い男性でmRNAワクチン接種後の心筋炎・心膜炎が増えることも分かってきました。
また、「ワクチンを打てばコロナに感染しない」というものでもありませんでした。
初期には感染や発症、他人への伝播を減らす効果も確認されていましたが、その効果は時間とともに低下し、Delta、そしてOmicronへとウイルスが変化するにつれて、感染そのものを防ぐ力は弱くなっていきました。一方で、入院や重症化を防ぐ効果は、特に高齢者では比較的残っていたことが分かっています。
つまり、
「感染を防げなかったのだからワクチンには意味がなかった」
というのも正確ではありませんし、
「打てば感染しないし、人にもうつさない」
という説明も正確ではなかった、ということです。
そして、ここが今回調べていてかなり重要だと思ったところなのですが、2021年に初めて接種したときの話と、Omicron以降に3回目、4回目、5回目と追加接種する話も、同じものとして考えることはできません。
実際、現在の日本では2021年当時のような全世代を対象とした大規模な接種ではなく、65歳以上など重症化リスクの高い人を中心とした定期接種へと制度が変わっています。厚生労働省も、現在の定期接種の目的を主に「個人の重症化予防」としています。厚生労働省
だから今回の記事では、
「コロナワクチンは良かったのか、悪かったのか」
と一括りにはしません。
2021年の高齢者への初回接種、健康な若い人への接種、Omicron以降の追加接種。それぞれを分けながら、実際にどのような効果があり、どのようなリスクが分かってきたのかを見ていきます。
そのためにはまず、ワクチン接種が始まった2021年当時が、いったいどんな状況だったのかを思い出す必要があります。
まず、2021年当時の状況を忘れてはいけない
今になってコロナワクチンを振り返るとき、どうしても現在の感覚で考えてしまいます。
でも、2021年当時と2026年の今では、前提がかなり違います。
2020年から2021年にかけては、まだ新型コロナに感染した経験のある人も、ワクチンを接種した人も少なく、社会全体として免疫を持つ人がかなり少ない状態でした。2020年6月に行われた抗体調査では、抗体保有率は東京0.10%、大阪0.17%、宮城0.03%と非常に低い数字でした。
治療法も今ほど整っていませんでした。
その後、デキサメタゾンなど有効な治療が使われるようになり、さらに抗ウイルス薬なども登場していきますが、ワクチン接種が始まった頃は、感染した場合の重症化をどう防ぐかについて、今より選択肢が少なかった時期です。
そして、高齢になるほど感染した場合の死亡リスクが急激に上がることも、比較的早い段階から分かっていました。
海外の流行初期のデータをまとめた研究では、感染した場合の死亡リスクは55歳で約0.4%、65歳で約1.4%、75歳で約4.6%、85歳で約15%と推定されています。もちろん、これは2020年当時の海外データを統合した推計なので、そのまま日本人一人ひとりに当てはめることはできません。
それでも、「若い人と高齢者ではリスクがまったく違う」ということは見えていました。
大阪では重症病床の運用率が99.7%になった時期もあった
私が住んでいる大阪でも、2021年春はかなり厳しい状況でした。
大阪府の2021年5月12日の会見では、実際に運用していた重症病床356床に対して355人が入院し、*重症病床の運用率は99.7%と説明されています。さらに、重症病床以外の中等症病院でも挿管などの重症治療を受けていた人が46人いました。大阪府公式サイト
つまり、「病院がいっぱいだ」というのは単なる雰囲気ではなく、実際に医療提供体制がかなり厳しくなった時期がありました。
ただし、この99.7%という数字も注意が必要です。これは全国のICU使用率でも、大阪に存在するすべての重症病床に対する数字でもなく、その時点でコロナ患者向けに実際に運用していた重症病床の使用状況です。大阪府自身も当時、「重症・軽症中等症病床とも依然極めて厳しい状況」と説明しています。大阪府公式サイト
こうした状況の中で、2021年にワクチン接種が本格的に始まりました。
ここを飛ばして、
「今は普通に生活できているのだから、当時もワクチンなんて必要なかったのでは?」
と考えてしまうと、少し違った見え方になってしまいます。
今は、ワクチン接種や自然感染によって免疫を持つ人が増え、ウイルス自体も変化し、治療法も増えています。
だから、「2026年の今ならどうするか」と「2021年のあの状況でどう判断するか」は、分けて考える必要があります。
私自身、今回調べるまでは、この違いをそこまで意識していませんでした。
では、その2021年当時、ワクチンには実際どれくらいの効果があったのでしょうか。
次は、よく聞いた「95%有効」という数字が、そもそも何を意味していたのかから見ていきます。
実際、コロナワクチンにはどれくらいの効果があったのか
コロナワクチンについて調べていると、まず出てくるのが「95%の有効性」という数字です。
私も当時、この「95%」という数字を何度も見た記憶があります。ただ、今回あらためて調べてみると、この数字について私は少し誤解していました。
「95%有効」は、95%の人が感染しないという意味ではなかった
Pfizer/BioNTechの初期の臨床試験では、2回目の接種から7日以降に症状のあるCOVID-19を発症した人は、ワクチン接種群18,198人のうち8人、プラセボ群18,325人のうち162人でした。
この差から算出されたのが、約95%という「有効率」です。
ただし、これは「ワクチンを打った人の95%がコロナにかからなかった」という意味ではありません。
この試験では、発症した割合はプラセボ群で約0.88%、ワクチン群で約0.04%でした。つまり、この観察期間における絶対的な差は約0.84ポイントです。
ただし、この0.84ポイントは、この臨床試験の観察期間中に「症状のあるCOVID-19を発症した割合」の差です。95%と0.84ポイントは同じ試験結果を別の方法で表した数字で、どちらか一方だけが正しいという意味ではありません。
同じ試験結果なのに、数字から受ける印象はずいぶん違います。
もちろん、だから95%という表現が間違いだったわけではありません。医薬品の効果を比較するときに使われる「相対リスク減少」という指標で、計算としては正しい数字です。
ただ、私のような一般の人が「95%有効」と聞いたときに、何が95%なのかまで正確に理解していたかというと、少し怪しい気がします。
さらに、この臨床試験が行われたのは2020年。まだOmicronどころかDeltaも登場する前で、ワクチンを接種した人も自然感染した人も少なかった時期です。
したがって、この「95%」を、その後のすべての変異株、すべての年代、3回目や4回目以降の接種に、そのまま当てはめることはできません。
それでも、初期のワクチンにははっきりした効果があった
一方で、「95%という数字の見せ方に注意が必要だった」ことと、「ワクチンに効果がなかった」ことも別の話です。
初期の臨床試験だけでなく、その後の実社会のデータでも、感染や発症だけでなく、入院や重症化を減らす効果が確認されました。特に高齢者や重症化リスクの高い人にとっては、この効果が大きな意味を持っていたと考えられます。
ここまでは、今回かなり多くの資料を読んでも、大きく覆るような話ではありませんでした。
では、よく聞く、
「でも結局、ワクチンを打ってもコロナに感染したじゃないか」
という疑問はどうなのでしょうか。
ワクチンを打っても感染する。それは途中から分かったことなのか?
これについても、話は少し複雑です。
初期には、ワクチンによって感染そのものが減り、他人への感染もある程度減らす効果が観察されていました。Delta流行期の英国の研究でも、接種した人から周囲への感染が減少する傾向が確認されています。
ところが、その効果はずっと同じではありませんでした。
接種から時間が経つにつれて感染予防効果が低下し、さらにOmicronのように免疫をすり抜けやすい変異株が広がると、「感染そのものを防ぐ」というワクチンの役割はかなり小さくなっていきました。
一方で、入院や重症化を防ぐ効果は、感染予防効果ほど急激には失われませんでした。特に高齢者では、その後の更新ワクチンでも入院を減らす効果が確認されています。
つまり、
「感染した人がいたからワクチンは効かなかった」
とは言えません。
ただし反対に、
「ワクチンを打てば感染しない。だから他人にも感染させない」
とまで言ってしまうのも、少なくともその後に分かってきた事実とは合いません。
この違いが、今回ワクチンについていろいろな疑問や不信感が生まれた理由の一つなのではないか、と私は感じました。
そして、ここからもう一つ重要な疑問が出てきます。
効果があったとしても、それによって起きる副作用や健康被害は、どの程度あったのでしょうか。
次は、ワクチンをめぐる話の中でも特に気になる、心筋炎、副作用、そして「接種後に亡くなった」という話を調べていきます。
副作用や「接種後に亡くなった」という話は、本当だったのか
ワクチンについて調べ始めると、避けて通れないのが副作用の話です。
ネットでは「副作用なんてほとんどなかった」という意見もあれば、「ワクチンのせいで多くの人が亡くなった」という話も見かけます。
では、実際のところはどうだったのでしょうか。
調べてみると、ここでもどちらか一方だけを見ていると、実態から離れてしまうことが分かりました。
心筋炎など、実際に確認された重大な副反応はある
まず、「重大な副反応はなかった」というのは正確ではありません。
mRNAワクチンの接種後には、まれではあるものの、心筋炎や心膜炎が増えることが確認されています。 特に多かったのが、若い男性の2回目接種後でした。
アメリカの2021年の監視データでは、2回目接種後の心筋炎報告は、12~17歳の男子で100万回あたり約63件、18~24歳の男性で約51件でした。
日本でも同じ傾向が確認されています。
厚生労働省の資料では、10代男性について、1回目と2回目を合わせた心筋炎疑いの報告頻度が、Pfizerでは100万人あたり約25~26件、Modernaでは約80~98件とされていました。
ただし、この数字にも注意が必要です。
これは自発的に報告された「疑い例」を集計したもので、すべてがワクチンによって起きたと証明された数字ではありません。また、ワクチンの種類、接種回数、年齢、性別によってリスクは大きく違います。
それでも、若い男性で心筋炎が増えるという安全性上のシグナルそのものは、その後の研究も含めて確認されています。
つまり、これは単なるネット上の噂ではありません。
「ほとんどの人が回復した」で終わらせていいのか
接種後に起きた心筋炎については、多くの人が退院し、症状が改善したことも報告されています。
一方で、その後の検査で心臓MRIの異常所見が残っていた人もいて、それが長期的にどのような意味を持つのかは、現在も完全には分かっていません。
私はここも大事だと思いました。
「多くは回復した」というのも事実ですが、
「だから何の問題もなかった」
とまで言ってしまうのも違います。
逆に、一部で長期的な異常が残ったからといって、
「mRNAワクチンを打った人の心臓はみんな危険だ」
と一般化することもできません。
分かっていることと、まだ分かっていないことを分ける必要があります。
心筋炎以外にも、因果関係が確認された副反応はあった
ほかにも、アナフィラキシーや、AstraZeneca、Johnson & Johnsonなどのアデノウイルスベクターワクチンで起きたTTSという血栓症、特定の製剤でのギラン・バレー症候群などが確認されています。
ここで気をつけたいのは、これらを全部「コロナワクチンの副作用」とまとめてしまわないことです。
Pfizer、Moderna、AstraZeneca、Johnson & Johnsonでは仕組みも違いますし、副反応の種類や頻度も違います。
「ワクチン」という一言だけでは、本当はかなり大ざっぱなのです。
では「ワクチン接種後に亡くなった人が多数いる」という話は?
これは今回、私が特に混乱した部分でした。
というのも、調べると、
「接種後死亡が2,000件以上報告されている」
という数字もあれば、
「国が1,000件以上の死亡を救済認定している」
という数字も出てくるからです。
こうした数字だけを見ると、
「やっぱりワクチンで1,000人、2,000人単位で亡くなったのでは?」
と思う人がいても不思議ではありません。
ところが調べてみると、この数字はそれぞれ意味が違いました。
「接種後死亡報告」は「ワクチンによる死亡認定」ではない
厚生労働省の説明では、2025年4月14日時点で、新型コロナワクチン接種後の死亡として累計2,283件が報告されていました(AstraZenecaを除く区分)。
ただし、これは、
「接種後に死亡したため、安全性を確認する目的で報告されたケース」
です。
接種した翌日に交通事故で亡くなった場合のような極端な例を想像すると分かりやすいですが、「接種の後に起きた」という時間的な関係だけでは、「接種が原因だった」とは判断できません。
だから安全性監視では、報告された症例について、病歴や発症時期、ほかの原因の可能性などを調べていきます。
一方で、こうした自発報告制度には報告されないケースもあり得ます。
つまり、
報告件数=ワクチンによる死亡人数
でもなければ、
報告されていない=ワクチンとの関係が絶対になかった
とも言えません。
国が認定した「死亡1,078件」は何を意味するのか
さらにややこしいのが、予防接種健康被害救済制度です。
2026年9月14日時点では、新型コロナワクチンに関する健康被害について9,504件が認定され、そのうち死亡に関する認定は1,078件となっています。厚生労働省「疾病・障害認定審査会」
この数字だけを見ると、
「国が1,078人について、ワクチンが死亡原因だと認めた」
と思ってしまいそうです。
しかし、制度の目的は被害を受けた可能性のある人を救済することです。そのため、裁判や疫学研究のように「ワクチンが原因であることを科学的に厳密に証明する」ことまでは求められていません。
ですから、
「1,078人がワクチンによって死亡したことが科学的に証明された」
という読み方は正しくありません。
ただ、反対に、
「救済制度だからワクチンとは何の関係もない」
と切り捨てるのも違います。
国が一定の基準で救済対象として認めたケースが1,000件を超えているという事実そのものは、きちんと受け止める必要があると思います。
このあたりが、疑惑が広がった理由の一つなのかもしれない
今回ここまで調べて、私は一つ納得したことがありました。
「ワクチンでたくさんの人が亡くなった」という話が広がった背景には、完全な作り話だけではなく、実際に存在する数字があるということです。
接種後の死亡報告がある。
健康被害救済制度で死亡認定されたケースもある。
実際に因果関係が確認された重大な副反応もある。
ここまで聞けば、
「やっぱり危険だったのでは?」
と考える人が出てくるのは理解できます。
しかし、その一つ一つの数字が何を数えているのかまで調べると、それらをそのまま「ワクチンによる死亡者数」とすることもできません。
この、
「元になった事実はある。でも、そこから先の解釈で話が大きく変わる」
という構造は、この後に出てくるさまざまな噂にも共通していました。
その代表的なものが、
「mRNAワクチンは人間の遺伝子を書き換えるのではないか?」
という話です。
私自身、この言葉は何度か目にしたことがあります。
では、これはいったいどこから出てきた話で、実際にはどこまで分かっているのでしょうか。
「mRNAワクチンは遺伝子を書き換える」という話は本当なのか
コロナワクチンについて調べていると、かなり早い段階で出てくるのが、
「mRNAワクチンを打つと、人間の遺伝子が書き換えられる」
という話です。
私も「mRNA」「遺伝子」と聞くと、何となくDNAそのものに手を加えるようなイメージを持っていました。そもそもmRNAワクチンという言葉自体、コロナ禍になるまでほとんど聞いたことがありませんでした。
そこで、この話についても調べてみました。
mRNAとDNAは、そもそも同じものではない
かなり簡単に言えば、人間のDNAには体をつくるための情報が保存されています。
mRNAは、そのDNAにある情報の一部をもとに、細胞がタンパク質をつくる際に使う「一時的な設計図」のようなものです。
コロナのmRNAワクチンでは、ウイルスのスパイクタンパク質の一部を細胞につくらせるためのmRNAを体内に入れ、それを免疫に覚えさせる仕組みが使われました。
では、そのmRNAが人間のDNAそのものを書き換えるのでしょうか。
今回調べた限り、実際にワクチンを接種した人のDNAにmRNAワクチンが持続的に組み込まれ、遺伝子を書き換えたことを示す証拠は確認できませんでした。
欧州医薬品庁(EMA)も、mRNAはDNAが保存されている細胞核に入ってDNAと直接結合するものではなく、人の遺伝情報を書き換えるという証拠はないと説明しています。(ema.europa.eu)
ですから、少なくとも現在までの証拠を見る限り、
「mRNAワクチンを打つと、人間の遺伝子が書き換えられる」
という表現は支持されていません。
では、「体内ですぐに全部消える」という説明は正しかったのか
ただ、ここでも話はそれだけでは終わりませんでした。
今回確認した厚生労働省の2026年7月の検討資料では、接種由来と考えられるmRNAや抗原が、一部の研究で接種から数週間後まで検出された例も整理されています。
つまり、
「DNAを書き換える」
ことと、
「接種したmRNAや、それによってつくられた抗原が一定期間体内で検出される」
ことは、まったく別の話です。
数週間検出されたからといって、それが人間のDNAに組み込まれたことにはなりません。また、それだけで何らかの病気を起こしていることが証明されたわけでもありません。
一方で、「mRNAは接種後すぐに完全になくなり、体内には一切残らない」と言い切るのも、現在分かっていることを正確に表現しているとは言いにくそうです。
「ワクチンにDNAが入っている」という話もあった
さらに調べると、
「mRNAワクチンにはDNAが混入している」
という話も出てきます。
これについてEMAの現在の説明を見ると、mRNAを製造するときにはプラスミドDNAを鋳型として使用するため、製造工程を経てもごく微量のDNA断片が最終製品に残る可能性があります。
つまり、「DNAは絶対に一片も入っていない」という説明も正確ではありません。
ただし、EMAは残留DNAについて許容基準を設定しており、EUで流通した製品を調べた研究でも、その量は基準以下だったとしています。また、現在までにその残留DNAによる健康被害や、人間のゲノムへの有害な組み込みを示す証拠は確認していないと説明しています。(ema.europa.eu)
ここも同じです。
「微量のDNA断片が存在する可能性がある」ことと、「そのDNAが人間の遺伝子を書き換える」ことの間には、大きな距離があります。
前者が事実だからといって、後者まで証明されたことにはなりません。
「不妊になる」という話はどうだったのか
mRNAワクチンについては、「将来子どもができなくなる」という話もかなり広まりました。
これについても、今回確認した研究では、ワクチン接種によって男女の受胎率が大きく低下するという結果は示されていません。北米で妊娠を希望する約2,100組を追跡した研究でも、接種による明確な受胎率低下は確認されませんでした。
一方で、月経周期が一時的に少し変化することについては、実際に研究で確認されています。
つまり、
「接種後に月経の変化が起きた人がいる」
という話から、
「だから不妊になる」
と進んでしまうと、そこには証拠の飛躍があります。
この二つも分けて考える必要があります。
「ターボ癌」「ワクチンでがんが増えた」という話は?
もう一つよく見かけるのが、「ワクチン接種後にがんが急増した」「ターボ癌が起きている」という話です。
今回の調査では、韓国約840万人を対象にした研究で、ワクチン接種と一部のがん診断との統計的な関連が報告されていることも確認しました。
ただし、この研究の方法上の問題を検討した論評では、接種した人としなかった人の受診・検診行動、観察開始時点、多重比較、がん発生までの時間など、因果関係を判断するうえで重要な問題が指摘されています。
ただし、この研究は「がんと診断された人の数」を調べたもので、がんが急速に進行したことを示した研究ではありません。また、「ターボ癌」という言葉自体にも、医学的に統一された診断基準はありません。
そのため、2026年時点では、「mRNAワクチンが一般的にがんを増やした」あるいは、「ターボ癌という新しい病気を引き起こした」と結論づけられる証拠は確認できませんでした。
もちろん、これは「今後どんな長期的影響も絶対に見つからない」という意味ではありません。
非常にまれな健康影響や、長い時間がたたなければ分からない問題について、監視や研究を続けることは必要です。
調べてみると、「完全なデマ」と一言で片づけるのも違う気がした
ここまで調べて、私が面白いと思ったのは、こうした噂の中には、出発点になった事実や研究が存在するものもあるということでした。
mRNAや抗原が数週間検出された研究がある。
製造工程ではDNAを鋳型に使い、微量のDNA断片が残る可能性もある。
一時的な月経周期の変化も確認されている。
接種後のがん診断との統計的な関連を報告した研究も存在する。
しかし、そこから、
「だからDNAが書き換えられる」
「だから不妊になる」
「だからターボ癌が起きる」
まで進むには、それぞれ別の証拠が必要です。
今回の調査では、その部分を裏付ける十分な証拠は確認できませんでした。
私はこの違いを知ったことで、なぜコロナワクチンをめぐる話がこれほど複雑になったのか、少し分かったような気がしました。
まったく根拠のない話だけが広がったわけではありません。
実際に存在する事実や研究に、まだ証明されていない解釈が付け加えられ、それが一つの大きな話として広がったケースもある。
では、もう一つ非常によく聞く、
「ワクチン接種が始まってから、日本の超過死亡が増えた」
という話はどうなのでしょうか。
実際に死亡者は増えたのか。そして、それをワクチンと結びつけることはできるのか。
次は、この点を調べてみます。
「ワクチン接種が始まってから超過死亡が増えた」という話は本当なのか
コロナワクチンについて調べていると、もう一つよく出てくるのが、
「ワクチン接種が始まってから、日本の超過死亡が増えた」
という話です。
これは数字を確認してみると、少なくとも「日本で2022年以降、超過死亡が大きく増えた」こと自体は事実でした。
ただし、問題はここからです。
超過死亡が増えたことと、それがワクチンによって増えたことは、同じ意味ではありません。
そもそも「超過死亡」とは何なのか
超過死亡とは、簡単に言えば、
「過去の死亡数などから予測される死亡数」と「実際に亡くなった人数」の差
です。
例えば、本来なら100万人が亡くなると予測されていた年に105万人が亡くなれば、単純化すると5万人の超過死亡があった、という考え方です。
ただし、「本来なら何人亡くなるはずだったのか」は実際に観測できる数字ではありません。過去の死亡数、人口構成、高齢化、季節変動などから統計モデルで推定します。
そのため、どの基準期間や計算方法を使うかによって、超過死亡の推計値には違いが出ます。
今回の調査で参照した2025年のBMJ Public Healthの研究では、日本の超過死亡は2020年には約2万2,000人の「過少死亡」だった一方、2021年には約3万2,000人、2022年には約11万9,000人、2023年には約9万1,000人の超過死亡があったと推計されています。
BMJ Public Health「日本の2020~2023年の超過死亡を分析した研究」
確かに、2022年以降に死亡数が大きく増えています。
そして日本でワクチン接種が本格的に始まったのは2021年です。
この二つを並べれば、
「ワクチン接種が始まったあとに超過死亡が増えている。では、ワクチンが原因なのではないか?」
という疑問が出てくること自体は、私にはそれほど不自然には思えません。
ただ、「接種開始後に増えた」だけでは原因とは言えない
ここで大切なのが、「時間的に前後していること」と「原因になっていること」を分けることです。
例えば、夏になるとアイスクリームの売上が増え、熱中症になる人も増えます。しかし、「アイスクリームを食べたから熱中症になった」とは言えません。両方に「暑さ」という別の原因があるからです。
超過死亡についても同じです。
2022年から2023年には、ワクチン接種だけでなく、大規模なCOVID-19の流行、高齢化、感染後の健康影響、医療機関の逼迫や受診の遅れなど、死亡数に影響し得るさまざまなことが同時に起きています。研究でも、超過死亡の増加は一つの原因では説明できず、複数の要因を検討する必要があるとされています。BMJ Public Health
実際、厚生労働省の人口動態統計では、COVID-19を原死因とする死亡は2021年に16,766人、2022年に47,638人、2023年に38,086人とされています。厚生労働省「人口動態統計に基づくインフルエンザ及び新型コロナの年間死亡者数」
ここで、
「超過死亡11万9,000人-コロナ死亡4万7,638人=残りはワクチンによる死亡」
という計算をすることはできません。
超過死亡は統計モデルによる「予想との差」であり、死亡診断書上のCOVID-19死亡数とはそもそも数え方が違います。また、COVID-19感染後の心血管疾患などの影響や、医療を受ける時期が遅れた影響なども、単純なCOVID-19死亡数には入らない可能性があります。
では、ワクチンとの関連を調べた研究はないのか
ここも気になったので調べました。
ワクチン接種回数と超過死亡との統計的な関連を指摘し、「ワクチンの影響をもっと調べるべきだ」と主張する研究者も実際にいます。
つまり、
「ワクチンとの関係を疑う研究なんて存在しない」
というわけでもありません。
2026年にFrontiers in Public Healthに掲載された日本の超過死亡についてのレビューでも、反復する追加接種と超過死亡との統計的関連を報告した研究があることを取り上げています。
ただし、このレビュー自身も、そうした研究からワクチンが超過死亡を引き起こしたという因果関係を結論づけることはできないとしています。地域ごとの接種率と死亡率を比べるだけでは、年齢、感染状況、持病、医療へのアクセスなど、ほかの要因を十分に取り除けないからです。Frontiers in Public Health「日本の超過死亡と研究上の課題を検討した2026年レビュー」
むしろ、このレビューが必要だとしているのは、
「誰が、いつ感染し、いつ何回ワクチンを接種し、その後どのような病気や死亡が起きたのか」
という個人単位のデータを結び付けて比較することです。
だから「関係ない」とまで言い切る必要もない
ここは、私自身かなり慎重に考えたいところです。
現在の証拠からは、
「2022年以降の日本の超過死亡の主な原因はコロナワクチンだった」
と結論づけることはできません。
一方で、
「ワクチンが死亡に影響したケースは一件もなく、超過死亡との関係を今後調べる必要もない」
とまで言う必要もないと思います。
前に見たように、ワクチンによる重大な副反応は実際に存在し、死亡に関する健康被害救済認定もあります。
だからこそ、「何万人もワクチンで亡くなった」と数字だけから結論を出すのでもなく、「関係があるはずがない」と最初から調べる必要を否定するのでもなく、個人単位のデータで検証していくことが必要なのでしょう。
今回、超過死亡について調べていても、また同じところに戻ってきました。
疑問が生まれる元になった事実はある。けれど、その事実だけでは噂として広まった大きな結論までは証明できない。
そして、この構造が特によく表れていたのが、次に調べた製薬会社のお金の話でした。
「結局、ワクチンで一番儲かったのは製薬会社なのではないか?」
これは単なる噂なのか。
実際の決算資料を見てみると、ここについてはかなりはっきりした数字が出ていました。
製薬会社がワクチンで莫大に儲けたというのは、本当だったのか
次に気になったのが、お金の話です。
コロナワクチンについては、「結局、一番儲かったのは製薬会社だった」「製薬会社が利益を得るために世界中でワクチンを打たせたのではないか」という話もよく見かけます。
では実際、製薬会社はどれくらいのお金を得たのでしょうか。
決算資料を確認してみると、ここについてはかなりはっきりしていました。
コロナワクチンによって、一部の製薬会社が極めて大きな売上や利益を得たこと自体は事実です。
Pfizerのワクチン売上は、年間約380億ドル
Pfizerの年次報告によると、Pfizer/BioNTechのコロナワクチン「Comirnaty」によるPfizer側の売上は、2021年に約367.8億ドル、2022年には約378.1億ドルでした。Pfizer Insights
日本円に単純換算するのは為替によって大きく変わりますが、いずれにしても年間数兆円規模の売上です。
Pfizer 2022 Annual Report|Comirnatyの売上
ただし、ここで「約380億ドル儲けた」と書くのは正確ではありません。
これは売上であって、製造費や研究開発費、BioNTechとの利益分配などを差し引いた純利益ではないからです。
この「売上」と「利益」の違いも、数字を見るときには意外と重要です。
BioNTechとModernaは、実際に巨額の利益も上げていた
一方で、ワクチンが事業の中心だったBioNTechやModernaを見ると、利益についてもかなり大きな数字が確認できます。
BioNTechは2021年に約190億ユーロの売上を計上し、純利益は約103億ユーロでした。2022年も純利益は約94億ユーロに達しています。BioNTech|2021年度決算
Modernaも2022年のワクチン製品売上が約184億ドル、全社の純利益は約84億ドルでした。Moderna|2022年度決算資料(SEC)
ですから、
「製薬会社はコロナワクチンで莫大なお金を得た」
という話を、単なる陰謀論として片づけることはできません。
少なくとも一部のメーカーにとって、コロナワクチンが非常に大きなビジネスになったことは、各社自身の決算資料から確認できます。
開発には公的なお金も使われていた
さらに調べると、ワクチン開発や大量生産には政府による支援もありました。
例えばドイツ政府はBioNTechに最大約3億7,500万ユーロの開発助成を行いました。アメリカでもOperation Warp Speedを通じて、製薬会社への研究開発・製造支援や大量の事前購入が行われています。
Pfizerについては少し注意が必要です。
Pfizerは米政府から他社と同じ形の直接的な初期研究開発助成を受けてはいませんでしたが、米政府はワクチン承認前の2020年7月に、1億回分を19億5,000万ドルで購入する契約を結んでいます。
つまり、「政府がPfizerの開発費を全部出した」というのも違いますが、「完全に民間企業だけがリスクを負って開発・販売した」というのとも少し違います。政府による大量の事前購入によって、販売リスクが大きく軽減された面があります。
ここまで調べれば、
「公的なお金も使われ、製薬会社はその後莫大な売上や利益を得た」
というところまでは、確認できる事実です。
しかも、政府との契約内容には非公開部分があった
私がさらに気になったのは、製薬会社と政府との契約です。
EUではワクチン購入契約の一部が公開されましたが、金銭的リスクや補償、利益相反に関する部分などに黒塗りがありました。
この情報公開をめぐって裁判になり、2024年にはEU一般裁判所が、欧州委員会による一部の非公開判断について問題があったとする判断を出しています。EU司法裁判所自身の解説でも、公開された契約書には財務リスクなどについて編集・非公開部分があったことが確認できます。EU司法裁判所|COVID-19ワクチン購入契約の情報公開をめぐる2024年判決の解説
さらに、この契約には副反応などが生じた場合のリスク分担についての条項も含まれていました。
EU司法裁判所の説明によれば、故意や重大な製造上の過失などを除き、一部の責任を加盟国側が負担する仕組みが設けられていました。
こうした仕組みには、パンデミックという緊急事態の中で、企業に通常より短期間で開発・大量生産させるためにリスクを分担する、という理由があります。
ただ、公的資金を使い、政府が大量購入し、企業側が巨額の売上を得る契約である以上、
「どんな条件で契約されたのか、もっと公開されるべきではないか」
という疑問が出るのも理解できます。
日本でもワクチンの購入単価は公表されなかった
日本でも同じような問題がありました。
2022年4月の衆議院厚生労働委員会では、政府が購入したワクチンの単価について質問されていますが、政府側は、製薬会社との守秘義務契約があるため単価を明らかにできないと答弁しています。
また、ワクチン関連予算を購入本数で単純に割っても、輸送費などが含まれているため、実際の1回あたり購入価格にはならないという説明もされています。
つまり、日本国民が税金で購入したワクチンについても、正確な契約単価を一般の人が確認できない部分があったということです。
これも事実です。
ここまで知ると、「何かあるのでは?」と思う気持ちは分かる
私はここまで調べて、なぜ製薬会社を疑う人が出てきたのかは、以前より理解できるようになりました。
莫大な売上と利益。
政府による研究開発支援や大量購入。
契約の非公開部分。
企業側のリスクを政府が一部負担する契約。
こうした事実だけを並べれば、
「これは製薬会社を儲けさせるためだったのではないか?」
と考える人が出ても不思議ではありません。
ただ、ここでも一つ大きな飛躍があります。
「製薬会社が儲かった」と「ワクチンが不要だった」は別の話
製薬会社が巨額の利益を得たことは、ワクチンに効果がなかったことの証明にはなりません。
これは分けて考える必要があります。
例えば、ある薬が非常によく効き、その結果世界中で売れれば、製薬会社が大きな利益を上げることはあり得ます。
反対に、企業が大きな利益を得ている以上、研究結果の見せ方や政策決定への影響、利益相反について厳しく監視する必要がある、という議論も当然あります。
だから本当に確認しなければならないのは、
「儲かったかどうか」だけではなく、その利益によって研究や政策、専門家の発言が歪められた証拠があるのか
というところです。
今回の調査でも、初期のPfizerの臨床試験には企業自身が資金提供し、企業関係者が著者として参加していました。これは利益相反を考えるうえで当然確認すべき情報です。
ただし、そのことだけで試験結果が虚偽だったとは言えません。
研究方法を確認し、規制当局による審査や、企業とは別に行われたその後の大規模研究でも同じ結果が再現されるかを見る必要があります。
実際、重症化や入院を減らすという主要な方向性については、その後の複数の実社会データでも確認されています。
結局ここでも、
「製薬会社は巨額の利益を得た」――これは事実。
でも、
「だからワクチンは効果がなかった」
「だから世界中の政府が製薬会社のために国民へ接種させた」
というところまでは、それだけでは証明できない。
という結論になりました。
ここまで調べてみると、製薬会社が巨額の売上や利益を得たこと、公的資金がワクチン開発や大量購入に使われたこと、さらに政府との契約に非公開の部分があったことなど、「本当にすべて問題なかったのだろうか?」と疑問を持つ背景になる事実は、確かにあったことが分かりました。
たとえばアメリカでは、Operation Warp Speedを通じて複数のワクチン候補の開発・製造に100億ドルを超える公的支援が行われました。米政府監査院(GAO)も、その内容とともに、緊急時だからこそ情報公開と透明性が重要だと指摘しています。米政府監査院(GAO)「COVID-19ワクチン開発への政府支援」
また、EUではワクチン購入契約の価格や責任分担などに非公開部分があり、情報公開をめぐって裁判にもなっています。日本でも、政府は製薬会社との守秘義務契約を理由に、ワクチンの購入単価を国会で明らかにしていません。
衆議院「2022年4月15日 厚生労働委員会会議録」
ただし、それらの事実があることと、「政府や専門家と製薬会社が結託して、必要のないワクチンを国民に打たせた」ということは別の話です。
今回調べた範囲では、そこまでの結論を裏付ける証拠は確認できませんでした。
このあたりまで調べて、私は今回のテーマに共通する一つのパターンが見えてきたように思います。
噂の出発点になった事実は、実際に存在することがある。
でも、その事実からネット上で語られている大きな結論までには、かなり距離がある。
では、ここまで見てきた「副作用」「死亡」「遺伝子」「超過死亡」「製薬会社」など、コロナワクチンについてよく聞く話を一度まとめてみると、どこまでが事実で、どこからがまだ証明されていない話なのでしょうか。
次は、今回調べた代表的な疑問や噂を、一つずつ整理してみます。
ここまで調べて、よく聞く話を整理してみた
ここまで、コロナワクチンについて私自身が気になったことを一つずつ調べてきました。
そして改めて感じたのは、ネットなどで広まった話には、まったく根拠が確認できないものもあれば、出発点には実際の事実があったものもあるということです。
そこで、ここまでの内容を一度整理してみます。
| よく聞く話 | 今回調べて分かったこと |
|---|---|
| ワクチンは感染を防げなかったのだから、まったく意味がなかった | 初期には感染や発症、他人への伝播を減らす効果も確認されていました。ただし時間とともに低下し、Omicronでは感染予防効果がかなり弱まりました。一方、特に高齢者では入院・重症化を防ぐ効果が残りました。 |
| ワクチンには重大な副作用なんてなかった | これは違います。若い男性を中心としたmRNAワクチン後の心筋炎・心膜炎、アナフィラキシー、特定のベクターワクチンによるTTSなど、因果関係が確認された重大な副反応があります。 |
| 接種後に2,000人以上亡くなった=2,000人以上がワクチンで死亡した | 「接種後死亡報告」は安全性を調べるために集められた報告で、すべてがワクチンによる死亡と認定されたものではありません。報告数と因果関係が確認された死亡数は別です。 |
| 健康被害救済制度で死亡認定された人は、全員ワクチンが死亡原因と科学的に証明された | これも違います。救済制度は被害を受けた可能性のある人を救済する制度で、疫学的に厳密な因果証明を求める仕組みとは異なります。ただし、認定された事実そのものを軽視していいわけでもありません。 |
| mRNAワクチンは人間のDNAを書き換える | 現在までに、人のゲノムに持続的に組み込まれてDNAを書き換えることを示す証拠は確認されていません。一方、一部の研究ではmRNAや抗原が数週間検出された例があり、「体内に一瞬も残らない」という説明も正確ではありません。 |
| ワクチン接種が日本の超過死亡増加の主因だった | 日本で2022年以降に超過死亡が大きく増えたことは事実です。しかし、ワクチンをその主因とする因果関係は現在までに十分示されていません。COVID-19そのもの、高齢化、感染後の影響、医療提供体制など複数の要因を検討する必要があります。 |
| 製薬会社はコロナワクチンで莫大なお金を得た | これは事実です。Pfizer、BioNTech、Modernaなどの決算資料から、ワクチンによる巨額の売上や利益が確認できます。 |
| だから政府と製薬会社が結託して、必要のないワクチンを国民に打たせた | 巨額の利益、公的資金、契約の非公開部分など、疑問が生まれる背景となる事実は確認できます。しかし、それらから「必要のないワクチンを意図的に接種させた」という結論までを裏付ける証拠は、今回の調査では確認できませんでした。 |
こうして並べてみると、今回何度も出てきたのは「事実」と「その事実から導かれた解釈」は同じではない、ということでした。完全な作り話ばかりではなく、実際に起きたことや不透明だったことに、まだ証明されていない解釈が重なって広がったケースもあります。
では、これほど状況が複雑なのに、なぜ2021年には大規模接種が行われ、今は当時ほど接種を呼びかけなくなったのでしょうか。
なぜ今は、あの頃ほどワクチンを打つように言われなくなったのか
ここまで調べてきて、最初に私が抱いた疑問に戻ります。
2021年頃には、テレビでも自治体でも職場でも、かなり大規模にワクチン接種が呼びかけられていました。それなのに今は、当時のような雰囲気はほとんどありません。
ではこれは、
「やっぱりワクチンは必要なかったと分かったから」
なのでしょうか。
調べてみると、どうもそう単純ではありませんでした。
2021年と今では、そもそもの条件がかなり違う
一番大きいのは、社会全体の免疫の状態が変わったことです。
2021年の接種開始当初は、新型コロナに感染したこともなく、ワクチンを接種したこともない人が大部分でした。
それに対して現在は、多くの人がワクチン接種、自然感染、あるいはその両方を経験しています。
WHOも2026年7月の最新のポジションペーパーで、現在のCOVID-19対策を考える前提として、SARS-CoV-2が引き続き流行している一方で、世界的に人口免疫が高い状態になっていることを挙げています。WHO「COVID-19 vaccines: Position Paper – July 2026」
つまり、2021年の「ほとんど免疫を持っていない状態で初めて接種する」のと、すでに感染や接種を経験した人が「さらにもう1回接種する」のでは、得られる利益が同じではありません。
ウイルス自体も変わった
もう一つ大きいのが、ウイルスの変化です。
最初のワクチンは、2020年に流行していたウイルスを前提に開発されました。その後、Alpha、Delta、Omicronと変異株が変わるにつれて、ワクチンによる感染予防効果も変化していきました。
特にOmicron以降は、接種していても感染するケースが珍しくなくなり、「感染そのものを防ぐ」という意味でのワクチンの価値は、初期よりかなり小さくなりました。
その一方で、入院や重症化を防ぐ効果については、特に高齢者など重症化リスクの高い人で引き続き確認されています。
だから現在は、
「社会全体の感染を止めるために、みんなで接種する」
という位置づけよりも、
「重症化しやすい人が、自分の重症化リスクを下げる」
という意味合いが強くなっています。
日本の制度も、実際に大きく変わっている
日本では、2024年3月末で全額公費による特例的な接種が終了しました。
2024年度以降は、原則65歳以上の人と、一定の条件を満たす60~64歳の人を対象に、秋冬に定期接種を行う制度へ変わっています。
厚生労働省は現在の定期接種について、目的を「個人の重症化予防により重症者を減らすこと」と説明しています。また、現在の制度には接種の努力義務も、自治体による接種勧奨の規定もありません。厚生労働省「新型コロナワクチンQ&A」
2021年当時とは、かなり違います。
だから、
「昔はあれほど打てと言っていたのに、今は言わなくなった。ということは、昔も必要なかったのだ」
とは、そのまま結びつけられません。
前提となる状況そのものが変わっているからです。
高齢者と若い人を同じように考えなくなったことも大きい
今回の調査を通じて何度も出てきたのが、年齢によって得られる利益が大きく違うという点でした。
高齢になるほどCOVID-19による入院や死亡のリスクは高くなります。そうした人では、追加接種によって重症化を防ぐ利益も比較的大きくなります。
一方で、健康な若い人はもともとの重症化リスクが低いため、同じ相対的な効果があったとしても、実際に防げる入院や死亡の絶対数は小さくなります。
さらに若い男性では、先ほど見た心筋炎などのリスクも考えなければなりません。
だから現在は、「全員に同じように何度も接種する」より、「誰にとって追加接種の利益が大きいのか」を考える方向に変わってきたと見る方が実態に近そうです。
治療法が増えたことも無視できない
2021年当時と比べて、COVID-19に対する治療の選択肢も増えました。
流行初期は、重症化してからできる治療がかなり限られていました。その後、ステロイド治療や抗ウイルス薬などが使われるようになり、感染した後の対応も変化しています。
つまり現在は、
「感染しないためにはワクチンしかない」
という状況でも、
「感染したら有効な治療法がほとんどない」
という状況でもありません。
ワクチンだけが変わったのではなく、COVID-19を取り巻く環境全体が変わったのです。
だから、「昔は正しかった/今は間違い」という話でもない
ここまで調べると、私はこの部分もかなり整理できました。
2021年に高齢者など重症化リスクの高い人へ初回接種を行ったことには、その時点でかなり強い根拠がありました。
一方で、その後も若い健康な人を含めて何度も同じように追加接種することについては、得られる利益が小さくなり、副作用や費用、すでに持っている免疫なども含めて考える必要が出てきました。
つまり、
「2021年には必要性が高かった」ことと、「2026年にも全員が同じように接種する必要がある」ことは、まったく別の話です。
逆に言えば、現在大規模接種をしていないことだけを理由に、
「やっぱり当時のワクチンは全部不要だった」
と考えるのも、少し違うように思います。
ここまで調べてきて、ようやく最初の疑問にかなり近いところまで戻ってきました。
では結局、コロナワクチンは本当に必要だったのでしょうか。
最後に、今回の調査を通じて私自身がどう考えるようになったのかを、まとめてみたいと思います。
結局、コロナワクチンは本当に必要だったのか
ここまでかなりの資料を調べてきました。
最初は、「コロナワクチンは結局、必要だったのか、必要なかったのか」という、もう少し単純な答えが出るのではないかと思っていました。
でも、実際に調べてみると、私の中での答えは少し変わりました。
「必要だった人は確かにいた。でも、すべての人、すべての時期、すべての接種を一括りにして『必要だった』『必要なかった』とは言えない」
というのが、今回調べた結果から私が受け取った答えです。
2021年の高齢者への接種と、その後の若い人への追加接種は同じ話ではない
2021年当時、新型コロナに対する免疫を持つ人はまだ少なく、治療の選択肢も現在より限られていました。
特に高齢者や重症化リスクの高い人では、感染した場合のリスクが大きく、初期の臨床試験やその後の実社会データを見ても、ワクチンによって入院や重症化を減らす利益は大きかったと考えられます。
一方で、健康な20代や10代、子どもでは、もともとの重症化リスクがかなり低くなります。
さらに若い男性では心筋炎などの副反応も確認されたため、高齢者への初回接種とまったく同じように「メリットの方が大きい」と一言でまとめることは難しかったことも、今回の調査で分かりました。
そしてOmicron以降、すでに感染や接種による免疫を持つ人が増えた中での3回目、4回目、それ以降の接種となれば、さらに別の話です。
現在WHOも、世界的に人口免疫が高まった状況を前提として、重症化リスクの高い集団を中心とした接種政策を示しています。WHO「COVID-19 vaccines: Position Paper – July 2026」
ワクチンに効果があったことと、問題がなかったことも別だった
もう一つ、今回かなり印象に残ったのがこの点です。
ワクチンに感染・重症化・死亡を減らす効果があったことと、ワクチンをめぐる政策や説明に問題がなかったことは、別の話でした。
若い男性の心筋炎など、当初は十分分かっていなかった重大な副反応が後から明らかになりました。
「感染を防ぐ」「人にうつさない」という説明についても、初期には一定の根拠があったものの、その後は効果が低下し、特にOmicron以降も同じ強さで説明することには無理がありました。
製薬会社が巨額の利益を上げたことも事実です。
政府との契約に非公開部分があり、日本でも購入単価が公開されなかったことも確認できました。こうした部分について「もっと透明性が必要だったのではないか」と疑問を持つのは、私はそれほど不自然なことではないと思います。
だからといって、「全部ウソだった」にもならなかった
ただ、ここが一番難しいところです。
問題や不透明な部分が見つかったからといって、
「やっぱりワクチンには効果がなかった」
「副作用を隠していた」
「製薬会社が儲けるためだけに接種させた」
「ワクチンが日本の超過死亡を引き起こした」
「mRNAによって人間の遺伝子が書き換えられた」
というところまで、自動的に証明されるわけではありません。
今回かなり調べましたが、そうした大きな主張の多くについては、2026年現在も十分な証拠を確認することはできませんでした。
むしろ今回、私が一番興味深いと思ったのは、噂の中に「事実」と「推測」が混ざっていることでした。
製薬会社が巨額の利益を得た。これは事実。
若い男性で心筋炎が増えた。これも事実。
接種後の死亡報告や健康被害救済制度による死亡認定がある。これも事実。
mRNAや抗原が接種後しばらく検出された研究もある。これも事実です。
でも、そこから、
「だから大量死を引き起こした」
「だからDNAを書き換えた」
「だからすべて製薬会社のためだった」
と結論づけるには、さらに別の証拠が必要です。
この事実と結論の間にある距離が、ネットやSNSではとても見えにくくなっていたのだと思います。
「陰謀論」と笑って終わらせるのも違うと思った
今回調べる前の私は、こうした話を「陰謀論」という言葉でまとめてしまえば、それで終わるような気もしていました。
でも実際に調べてみると、それでは少し乱暴だと思うようになりました。
副作用が実際にあった人もいる。
接種後から長く体調不良を訴えている人もいる。
政府や製薬会社の情報公開について、もっと説明が必要だったと思える部分もある。
だから、疑問を持った人そのものを「おかしな人」と決めつけてしまえば、本当に検証すべき問題まで見えなくなってしまいます。
一方で、疑問を持つことと、証拠がない段階で答えまで決めてしまうことも違います。
疑うことは大切だけれど、疑った先でも証拠を見る。
今回の記事を書きながら、結局そこが一番大事なのではないかと思いました。
5年経った今だから、少し冷静に見られることもある
コロナ禍の真っただ中では、誰も5年後のデータを知ることはできませんでした。
政府も専門家も製薬会社も、そして私たち一般の人も、分からないことがたくさんある中で判断していました。
だからこそ、今になって当時の判断を振り返るときには、
「当時、その時点で何が分かっていたのか」
と、
「その後になって何が分かったのか」
を分けて考える必要があります。
調べる前より、答えは少し複雑になった
結局、私は今回の記事を書いて、
「コロナワクチンは正しかったのか、間違っていたのか」
という問いに、きれいな○か×を付けることはできませんでした。
でも、調べる前より分からなくなったわけではありません。
むしろ、
高齢者などには大きな利益があった。
若い人では利益とリスクのバランスが違った。
副作用は実際にあった。
製薬会社は巨額の利益を得た。
説明や透明性に検証すべき部分もあった。
しかし、そこから語られている多くの大きな陰謀までを裏付ける証拠は確認できなかった。
というところまでは、かなり整理することができました。
そして、おそらくこれが、私が最初に知りたかったことなのだと思います。
どちらかの陣営の答えを信じるのではなく、
「実際には何が分かっていて、何がまだ分からないのか」
を一度自分で確かめてみる。
5年経った今だからこそ、あのとき世界中で起きていたことを、少し距離を置いて振り返る意味はあるのではないでしょうか。
最後に
この記事は、特定の人にワクチン接種を勧めたり、接種しないことを勧めたりするものではありません。
年齢、基礎疾患、感染歴、過去の接種歴などによって判断は変わります。現在の接種について迷っている場合は、厚生労働省などの最新情報を確認し、必要に応じて医療機関に相談してください。


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