断酒を続けているのに、なぜ人生は楽にならないのか ――それでも私が飲まない選択を続けている理由

断酒を続けた先にある現実と向き合う男性の後ろ姿 断酒・禁酒のリアル

断酒を続けた先にある現実と向き合う男性の後ろ姿

断酒をすれば、人生は少し楽になる。
どこかで、そう思っていた自分がいました。

実際、断酒によって救われた部分はたくさんあります。
体調は安定し、頭はクリアになり、
「飲むかどうか」で悩む時間は、確かに消えていきました。

それでも正直に言えば、
人生そのものが楽になったかというと、そうではありません。

仕事の悩みも、人間関係の行き詰まりも、
将来への不安も、断酒をしていようがいまいが、
変わらず目の前に現れ続けました。

むしろ断酒をしたことで、
それらを しらふのまま、正面から受け止めるしかなくなった
その意味では、断酒は決して楽な選択ではなかったと思います。

それでも私は、今も断酒を続けています。
この文章は、
「断酒をすれば楽になる」と信じていた私が、
なぜ今も飲まない選択を続けているのかを、
できるだけ誠実に整理した記録です。

なぜ人は「断酒すれば楽になる」と思うのか

多くの人が、断酒を考え始めるとき、
どこかでこう期待します。

「お酒をやめさえすれば、少しは楽になるはずだ」

この考え自体は、決して不自然ではありません。
なぜなら、お酒は長い間、
つらさを和らげる役割を担ってきたからです。

酒が担っていた“役割”

私自身もそうでした。

仕事で嫌なことがあった日。
人間関係で気持ちがささくれ立った日。
将来のことを考えて不安になった夜。

そういうときは、
お酒を飲んで、バラエティ番組を見て、笑って、
一日の終わりをやり過ごす。

それが、精神的にいちばん安定する方法だと、
本気で思っていました。

むしろ、
それがなければ、
嫌なことが頻繁に起こるこの世の中で、
やっていけるはずがない。
そう感じていたほどです。

だからこそ、
「お酒をやめる=楽しみを失う」
「断酒=苦しい修行」
というイメージも、同時に持っていました。

苦しさを消していたのではなく、感じなくしていただけ

ただ、断酒をしてしばらく経ってから、
一つのことに気づきました。

お酒は、
苦しさそのものを消していたわけではなかった、ということです。

飲んでいる間は、確かに忘れられる。
気分も軽くなる。
その瞬間だけ見れば、「楽」になります。

けれど、
仕事の問題が解決したわけでも、
人間関係が改善したわけでもありません。

嫌なことは、
ただ棚上げされていただけでした。

断酒をすると、
この「棚上げ」ができなくなります。

だからこそ、
お酒をやめれば楽になる、という期待は、
ある意味で自然でありながら、
同時に少しだけ的外れでもある。

断酒で手放すのは、
苦しさそのものではなく、
苦しさを感じなくする手段だったからです。

その事実に気づいたとき、
私はようやく、
「なぜ断酒しても楽にならないのか」を
少しだけ理解できた気がしました。

断酒で消えるもの、消えないもの

断酒をすると、
生活の中で確かに「なくなるもの」があります。

同時に、
どれだけ続けても「残り続けるもの」もあります。

ここを取り違えると、
「思っていたのと違う」という違和感が、
長く尾を引くことになります。

消えるもの:麻酔・ごまかし・逃げ道

断酒をすると、
お酒を飲んで忘れる、という選択肢が消えます。

嫌なことがあったから飲む。
気分が落ちたから飲む。
考えたくないから飲む。

そういった「一時的に感覚を鈍らせる手段」が、
生活から完全になくなります。

もちろん、
スポーツをする、
趣味に没頭する、
娯楽で気分転換をする、
といった方法は残ります。

ただ正直に言えば、
お酒ほど即効性があり、
強い刺激で思考を止めてくれるものは、
他にはなかなかありません。

だから断酒をすると、
問題から目を逸らすことが難しくなります。

最終的には、
真正面から向き合うしかなくなる。

この点で、断酒は
決して「楽になる選択」ではありません。

消えないもの:人生の問題そのもの

一方で、
断酒をしても消えないものがあります。

それは、
人生の問題そのものです。

仕事の行き詰まり。
人間関係の摩擦。
将来への不安。
自分自身への迷い。

どれだけしらふで過ごしても、
それらが自然に消えることはありません。

何かでごまかそうが、
時間が経とうが、
向き合わなければ、問題は残り続けます。

断酒をすると、
その事実がよりはっきり見えるようになります。

なぜなら、
「今日は飲んで忘れよう」という逃げ道が、
完全に閉ざされるからです。

この段階で多くの人が、
「思っていたよりしんどい」と感じます。

それは、断酒が失敗だったからではなく、
人生の問題が、
初めて“そのままの形”で目の前に現れただけなのだと思います。

楽にならないのは、失敗ではない

断酒をしても、
思ったほど気持ちが楽にならない。

この感覚に直面したとき、
多くの人は不安になります。

「やり方が間違っているのか」
「自分には向いていないのか」
「もう少し飲み方を調整した方がいいのではないか」

そう考えてしまうのも、無理はありません。

でも、今振り返って思うのは、
楽にならないこと自体が、
断酒の失敗を意味しているわけではない、ということです。

むしろ「正常な状態に戻った」だけ

お酒を飲んでいた頃、
私たちは多くの感情を、
麻酔をかけた状態で処理していました。

つらさも、不安も、苛立ちも、
一時的に感じなくしていただけ。

断酒をすると、
その麻酔が切れます。

すると、
本来向き合うべき感情や問題が、
そのままの強さで戻ってくる。

それは、
何かが悪化したというより、
目を覆っていたものが外れただけなのだと思います。

断酒して楽にならないのは、
異常だからではありません。

むしろ、
本来の状態に戻っただけ。

そう考えると、
この違和感にも、少し説明がつきます。

しらふで向き合う人生の再開

飲もうが、飲むまいが、
人生の問題を解決するには、
しらふで向き合う必要があります。

お酒で紛らわせている間は、
考える時間も、判断する余地も、
どうしても曖昧になります。

断酒をすると、
ごまかしていた時間が消える分、
向き合う時間が増えます。

しかも、
よりクリアな頭で考えることになる。

それは、
楽ではありません。

むしろ、
以前より厳しく感じる場面もあります。

それでも、
自分で考え、選び、決める。

その積み重ねが、
少しずつ「生きている実感」につながっていく。

断酒とは、
楽になるための選択ではなく、
人生としらふで向き合い直すための選択だった。

今は、そう思っています。

それでも断酒を続ける人が得ているもの

断酒を続けていても、
人生が楽になるとは限りません。

むしろ、
しらふで向き合う分、
以前より厳しく感じる場面が増えることもあります。

それでも断酒を続けている人がいます。
私自身も、その一人です。

では、何を得ているのか。

楽さではなく「納得」

断酒をすると、
問題解決が一気にうまくいくわけではありません。

考えて、迷って、
選択を間違えることもあります。

それでも、
しらふの状態で、時間をかけて考え、
自分で選んだという事実が残ります。

結果がうまくいかなかったとしても、
「自分で判断した」という感覚は残る。

この「納得感」は、
お酒でやり過ごしていた頃には、
ほとんど感じられなかったものでした。

ごまかしていた時間がなくなり、
真正面から向き合う分、
人生はシビアになります。

それでも、
後から振り返ったときに、
自分をごまかしていなかった、と思える。

断酒で得られたのは、
楽さではなく、
この納得だったように思います。

判断を自分に戻すという感覚

飲んでいた頃、
私は知らず知らずのうちに、
判断をお酒に預けていました。

嫌なことがあれば飲む。
考えたくないことは先送りにする。
何となく時間が解決するのを待つ。

うまくいくこともあったかもしれません。
でも、
手をつけられないまま悪化したことも、
確実にありました。

断酒をすると、
その逃げ道がなくなります。

どうするかを、
自分で考えるしかない。

選んだ結果がどうであれ、
責任も含めて、自分に戻ってくる。

それは、
重たい感覚でもありますが、
同時に「人生を自分の手に戻す」感覚でもありました。

忘れて放置して、
どうにかなってしまう人生よりも。

自分で考え、選び、
結果を引き受ける人生の方が、
少なくとも私は、納得できる。

それが、
断酒を続けている一番の理由かもしれません。

それでも迷う人へ

断酒を続けていると、
多くの人が一度は立ち止まります。

「ここまでやったのだから、
 もう節酒でいいのではないか」

この迷いは、
弱さでも、甘えでもありません。

節酒という分岐点

特に、断酒を始めたばかりの頃や、
ある程度生活が落ち着いてきた時期に、
この考えは強くなります。

最初の頃は、
「一生飲めない」という発想そのものが重く、
楽しみをすべて失ったような感覚になることもあります。

それほどまでに、
お酒は生活や感情と深く結びついています。

だからこそ、
節酒という選択肢が頭をよぎるのは、
とても自然なことです。

ここで揺れるのは、自然なこと

迷いが生まれるのは、
断酒が意味のない行為だからではありません。

むしろ逆で、
断酒によって感覚が戻り、
考える力が戻ったからこそ、
「自分で選びたい」という気持ちが出てくる。

揺れながら考えること自体が、
すでに以前とは違う状態だと思います。

大切なのは、
この分岐点で、
勢いや気分だけで決めないことです。

少なくとも私は、
「楽になりたいから」という理由で
飲む選択をすると、
必ず後で後悔しました。


まとめ|断酒は救済ではない

断酒をしても、
人生は楽にはなりません。

問題は起きますし、
不安も、迷いも、消えません。

ただ一つ、
確実に変わることがあります。

それは、
その人生を
しらふの自分が引き受けるようになる
という点です。

断酒は、
救済ではありません。

でも、
自分の人生を、自分の手に戻す選択ではある。

楽さよりも、
納得を選ぶ。

ごまかしよりも、
引き受ける方を選ぶ。

私は、その選択をしています。

このページが、
今迷っている誰かにとって、
決断を急がせるものではなく、
静かに考える材料になればと思っています。

必要なところから、
自分のペースで読んでください。

この話全体の位置づけは、
👉【断酒・禁酒のリアル|全体マップ】で整理しています。

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