あれから数年が経った今でも、私はお酒を飲んでいません。
2020年の大晦日、1年の断酒を振り返りながら、当時の自分はこの記事を書いていました。
「今年1年、お酒を飲まずに過ごせた」それだけで、精一杯だった頃の記録です。
あの頃は、断酒を続けることで人生が少しずつ良くなっていくと、どこかで期待していました。
正しい選択をしているのだから、きっと報われるはずだ、と。
でも数年経った今、はっきり言えることがあります。
断酒をしたからといって、人生の問題が消えるわけではありません。
むしろ、問題はより鮮明に見えるようになります。
それでも私は、「お酒をやめて良かった」と思っています。
なぜなら、飲んでいた頃には見えなかった現実と、逃げずに向き合えるようになったからです。
この記事では、
- なぜ私が断酒を決意したのか
- 断酒して本当に変わったこと
- そして、変わらなかった現実
について、2020年当時の記録を踏まえながら、今の視点で正直に振り返ります。
断酒は、すべてを解決してくれる魔法ではありません。
でも、人生を「ごまかさずに生きる」ための、ひとつの選択肢にはなり得ます。
同じようにお酒との付き合い方に悩んでいる方の、何かの参考になれば幸いです。

僕の断酒の経緯
私は、2019年8月26日から断酒を続けています。
今振り返ると、この日付は「お酒をやめた日」というより、
これ以上自分をごまかすのをやめた日だったと思います。
私は20歳の頃から、ほぼ毎日お酒を飲む生活を続けていました。
好きだったのはビールやチューハイで、ワインやシャンパンもよく飲んでいました。
日本酒やウイスキーはあまり好みではなく、
いわゆる“大酒飲み”という自覚はありませんでした。
実際、1日の量も多くて缶ビールやチューハイを4〜5本程度。
たまに会社の歓迎会や送別会で飲み過ぎて二日酔いになることはありましたが、「自分は節度のある飲み方をしている」と思い込んでいました。
しかし、30歳を過ぎた頃から、原因の分からない激しい腹痛に襲われることがありました。
当時は深刻に受け止めていませんでしたが、今思えば急性膵炎を起こしていたのだと思います。
そして42歳のとき、慢性膵炎と診断され、約2か月間の入院生活を送ることになりました。
医師からは、「次に膵炎を起こせば命に関わる」とはっきり告げられました。
その後しばらくは、お酒を完全にやめることができていました。
再発=死、という恐怖があったからです。
それでも心のどこかでは、
「慢性膵炎は一升瓶を毎日飲むような人がなる病気ではないのか」
「自分はそこまで飲んでいない」
という思いが消えませんでした。
つまり、本当の原因はお酒ではないのではないか、
少量なら大丈夫なのではないか、
そんな都合のいい解釈を、自分自身に与えていたのです。
入院から約4年後、私は家族に隠れて再びお酒を飲み始めました。
不思議なことに、体に目立った不調は起こりませんでした。
それが、さらに私を油断させました。
当時高校生だった息子に飲酒を見つかっても、
「これくらい、いいじゃないか」
「仕事もしているし、ギャンブルもタバコもしない」
「これくらいの楽しみがなければ生きていてもつまらない」
と、正当化して逆に怒ることさえありました。
当然、家族は強い不安と恐怖を感じていました。
それでも私は、その気持ちから目を背け続けました。
アルコール専門病院にも通いましたが、結果的にお酒をやめることはできませんでした。
なぜなら、「飲んでも何も起こらない」という事実が、「自分は大丈夫だ」という誤った確信を強めてしまっていたからです。
こうして私は、
隠れて飲む → 見つかる → しばらくやめる → また隠れて飲む
という生活を、約4年間も繰り返しました。
嘘をつく回数が増え、家族からの信用は少しずつ失われていきました。
そして、2019年の夏。
家族が私をまったく信用できなくなっているという現実を、ようやく突きつけられました。
そのとき初めて、
「このままでは、本当にすべてを失う」
そう思いました。
体だけでなく、家族との関係、自分自身への信用。
それらを守るために、私は本気で断酒を決意しました。
こうして始まったのが、今も続いている断酒生活です。
断酒して分かったメリット(本当に変わったこと)
断酒を続けてきて、確かに「変わった」と感じることはあります。
ただし、それは劇的な成功や、人生が一気に好転するような変化ではありません。
むしろ、当たり前の状態に戻った、という感覚に近いと思います。
お酒を飲んでいた頃、私は自覚しないまま、日常の一部を“酔い”と“二日酔い”に差し出していました。
飲んでいる時間はもちろん、翌日のだるさや思考の鈍さも含めて、人生の一部を曖昧にしていたのです。
判断力が落ちない
断酒して最も大きく変わったのは、判断力が安定したことです。
お酒を飲んでいれば、どんなに節度を守っているつもりでも、必ず思考は鈍ります。
酔っている時間はもちろん、翌日も万全とは言えません。
断酒をすると、そうした“ブレ”がなくなります。
良い判断も、悪い判断も、すべてが自分の責任として積み重なっていきます。
うまくいったときは、偶然や勢いではなく、自分の選択の結果だと受け止められる。
逆に、失敗したときも、誰かやお酒のせいにせず、きちんと反省できます。
これは地味ですが、生き方の土台が変わる感覚でした。
感情をごまかさなくなった
お酒を飲んでいた頃、私は無意識のうちに、
不安、怒り、寂しさといった感情を、お酒で薄めていたのだと思います。
一時的には楽になります。
でも、根本的な問題は何も解決しません。
断酒をすると、そうした感情がそのままの形で現れます。
正直、これは楽ではありません。
ただ、感情をごまかさずに受け止めることで、
「自分は何に不満を感じているのか」
「何がつらいのか」
を、冷静に考えられるようになりました。
これは、後で書く“断酒の厳しさ”にもつながる部分ですが、
同時に、自分の人生を自分で引き受けている感覚でもあります。
ほぼすべての時間がクリアになった
断酒生活では、ほぼすべての時間がしらふです。
当たり前のようですが、これは大きな変化でした。
酔って記憶が曖昧になることもありませんし、
二日酔いで何も考えられない時間もありません。
良いことも、悪いことも、
すべてをクリアな状態で経験し、理解し、記憶します。
その結果、人生の出来事に対して
「納得できる」
という感覚を持てるようになりました。
結果が良くても悪くても、
「自分はこう判断し、こう行動した」
と説明できる。
これは、断酒をして初めて得られた感覚です。
それでも万能ではない
誤解してほしくないのは、
断酒は人生を楽にしてくれる魔法ではない、ということです。
問題は起こります。
仕事でも、家庭でも、人間関係でも。
ただ一つ違うのは、
それらから逃げなくなった、という点です。
逃げずに向き合うことで、解決できる問題もあれば、
すぐにはどうにもならない問題もあります。
それでも、飲んでごまかしていた頃より、
自分自身に対して誠実でいられるようになりました。
それが、断酒を続けてきて実感している、
一番のメリットだと思います。
すべてがうまく行くわけではない
断酒をすれば、人生の問題が次々と解決していく。
正しい生き方を選べば、困ったことは起こらなくなる。
正直に言うと、断酒を始めた当初、私もどこかでそんな期待をしていました。
しかし現実は、まったく違いました。
お酒をやめたからといって、
仕事の問題がなくなるわけでも、
家庭の悩みが消えるわけでも、
人間関係が自動的に修復されるわけでもありません。
問題は、相変わらず起こります。
むしろ、以前よりもはっきりと見えるようになります。
それは、お酒が問題を解決してくれていたわけではなく、
ただ一時的に“見えなくしていただけ”だったからです。
お酒を飲んでいれば、
嫌なことがあっても、その場では忘れることができます。
考えたくない現実から、少し距離を取ることもできます。
でも、断酒をすると、そうはいきません。
不安も、怒りも、後悔も、
すべてをしらふのまま受け止める必要があります。
これは、断酒生活の中でも、特につらい部分だと思います。
「正しいことをしているのに、なぜこんなに苦しいのか」
「もう十分頑張っているはずなのに、なぜ報われないのか」
そんな思いが、何度も頭をよぎりました。
ここで重要なのは、
断酒は“報われるための行為”ではない、ということです。
断酒は、人生を楽にしてくれる保証ではありません。
ただ、人生から逃げない状態をつくるだけです。
逃げなければ、当然、苦しい場面にも直面します。
うまくいかない現実とも、向き合わざるを得ません。
そして、その苦しさから逃れようとすると、
再びお酒に手を伸ばしてしまいます。
けれど、そこで再飲酒してしまえば、
問題が消えるどころか、また同じ場所に戻るだけです。
だから私は、
うまくいかない現実があっても、
「飲まずに耐える」ことを選ぶしかないと考えるようになりました。
それは我慢や根性論ではなく、
少なくとも、自分をごまかさないための選択です。
この章で書いたように、
断酒は、すべてを好転させる魔法ではありません。
それでも、逃げずに向き合い続けていると、
少しずつですが、周囲の見え方が変わってきます。
そして次に直面するのが、
「人間関係はすぐには元に戻らない」という現実でした。
人間関係の修復には時間が必要
断酒を続けていれば、
壊れてしまった人間関係も、いずれ元に戻っていく。
以前の私は、どこかでそんな期待をしていました。
しかし現実は、まったく違いました。
お酒をやめたからといって、
これまで傷つけてきた人との関係が、
すぐに修復されるわけではありません。
それは、考えてみれば当然のことです。
何度も嘘をつかれ、
何度も心配させられ、
そのたびに裏切られてきた側からすれば、
「もう飲んでいない」という言葉を、簡単に信じられるはずがありません。
私自身、隠れ飲みを繰り返す中で、
家族に多くの不安と失望を与えてきました。
断酒していると言いながら嘘をつき、
自分の言葉の価値を、自分で下げ続けてきたのです。
その結果、
断酒を始めた当初、私の言葉はほとんど信用されていませんでした。
「本当にやめているのか」
「またどこかで隠れて飲んでいるのではないか」
そう思われていたとしても、不思議ではありません。
正直に言えば、
一生懸命断酒を続けている側としては、
疑われることがつらく、腹立たしく感じることもありました。
「ここまで頑張っているのに、なぜ信じてくれないのか」
そんな気持ちになることもありました。
それでも、冷静に考えれば分かります。
信じられなくしてしまった原因は、
すべて自分自身にあります。
これまで積み重ねてきた嘘と行動が、
今の関係をつくっている。
そう受け止めるしかありませんでした。
人間関係の修復には、時間がかかります。
かけた迷惑や傷の深さによっては、
何年経っても元には戻らないかもしれません。
場合によっては、
完全に修復できない関係もあるでしょう。
それでも、
一緒にいてくれる人がいるという事実は、
本当はとてもありがたいことなのだと思います。
見放されてしまってもおかしくなかった中で、
それでも関係が続いている。
そのこと自体に、
もっと目を向けるべきなのだと、今は感じています。
楽しい思い出も、違った形で思い返されるようになった
断酒を続ける中で、
もうひとつ、予想していなかった変化がありました。
それは、
過去の楽しい思い出が、素直に楽しいものとして思い出せなくなったことです。
年末年始や、テレビで昔の映像や音楽が流れると、
自然と「あの頃は楽しかったな」と思い出します。
でも、その直後、
必ずこう考えてしまうのです。
「あの頃の延長線上で、
自分は人を傷つけ続けてしまったのではないか」
楽しかった記憶が、
自分の隠れ飲みという時間のフィルターを通して、
少し痛みを帯びてよみがえる。
これは、正直につらい感覚でした。
ただ、それもまた、
自分がしてきた行動の結果なのだと思います。
忘れてしまうことも、
なかったことにすることもできない。
だからこそ、
その痛みも含めて引き受けながら、
これからの時間を積み重ねていくしかありません。
人間関係の修復とは、
過去を消すことではなく、
過去を抱えたまま、誠実に生き続けることなのだと、
今はそう感じています。
それでもお酒は飲まない
ここまで書いてきたとおり、
断酒を続けていても、いいことばかりが起こるわけではありません。
むしろ、
つらい現実や、向き合いたくない感情と、
しらふのまま向き合い続ける時間のほうが長いと思います。
断酒とは、
人生で起こるさまざまな出来事に、
逃げ場をつくらずに立ち向かうことだからです。
それでも、私はお酒を飲みません。
なぜなら、
ここで再びお酒に手を伸ばしてしまえば、
すべてが元に戻ってしまうからです。
また嘘をつき、
また人をがっかりさせ、
また自分自身を裏切る。
それだけは、もう繰り返したくありません。
お酒を飲めば、
一時的には楽になるかもしれません。
考えなくていい時間を、手に入れられるかもしれません。
でも、その代わりに、
失うものの大きさを、私はもう知っています。
信用。
人との関係。
そして、自分自身への最低限の信頼。
それらを手放してまで、
お酒に逃げる人生は、私にとってもう選択肢ではありません。
だから私は、
うまくいかない日があっても、
気持ちが沈む夜があっても、
飲まないという選択だけは手放さないと決めました。
断酒は、特別な才能でも、
強い意志の証明でもありません。
ただ、
今日一日をしらふで終える、
それを積み重ねていくだけのことです。
ときには綱渡りのように感じる日もあります。
それでも、その一歩一歩が、
自分をごまかさない人生につながっていると信じています。
お酒を飲まない。
それは、私にとって
正しい生き方を選び続けるための、最低限の約束です。
これから先も、
完璧にはできないかもしれません。
迷うことも、弱くなることもあるでしょう。
それでも、
私は今日もお酒を飲みません。
まとめ
この記事では、
断酒を始めた当時の記録をもとに、
数年経った今の視点から、断酒生活を振り返ってきました。
断酒をすることで、
判断力が安定し、
感情をごまかさなくなり、
ほぼすべての時間をしらふで過ごすようになりました。
その結果、
人生で起こる出来事を、良いことも悪いことも含めて、
自分の選択として引き受けられるようになったと感じています。
一方で、
断酒をしたからといって、
人生の問題が消えるわけではありません。
仕事の悩みも、人間関係の難しさも、
以前と変わらず起こります。
むしろ、お酒でごまかしていた頃より、
それらははっきりと目の前に現れるようになりました。
また、傷つけてきた人間関係は、
断酒を続けているからといって、
すぐに修復されるものではありません。
過去の行動の積み重ねがある以上、
時間がかかることも、元に戻らないこともあります。
楽しかったはずの思い出さえ、
ときには痛みを伴って思い返されることもあります。
それでも、
再びお酒に逃げてしまえば、
結局は同じ場所に戻るだけです。
だから私は、
完璧でなくても、
迷いながらでも、
お酒を飲まないという選択を続けています。
断酒は、人生を劇的に好転させる魔法ではありません。
ただ、人生から目を背けずに生きるための、ひとつの方法です。
もし今、
お酒との付き合い方に悩んでいる方がいたら、
この体験談が、何かを考えるきっかけになれば幸いです。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
こうぷー





























































































































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